大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(ツ)18号 判決

原審が確定したところによれば、(1)訴外大安土地建物株式会社は、権限がないにもかかわらず、上告人の代理人として、昭和四五年九月一六日附帯上告人(被上告人。以下単に「被上告人」という。)に対し、原判決末尾添付物件目録(一)、(二)記載の土地(本件土地。当時は九四七番一六の土地の一部であり、前同日該土地部分につき同番一九の土地として分筆登記が経由された。)を、代金は上告人が本件土地売渡しの見返りとして右訴外会社から譲り受ける土地(九四七番一)の譲受価額と同額とする約定で、売り渡し、右売買に基づく所有権移転について、同年一一月二一日農地法五条所定の許可を受けた、(2)上告人は、おそくとも昭和四八年六月二五日、先に本件土地売渡しの見返りとして右訴外会社から代金六二万円で譲り受けた土地(九四七番一)につき上告人名義の所有権取得登記を経由したとき、訴外会社の前叙無権代理行為を追認した、(3)その後、上告人は、昭和五三年三月二三日、当時の地番九四七番一九であった本件土地を九四七番一九の土地と同番二四の土地(原判決末尾添付物件目録(一)記載の土地)の二筆に分筆し、その後、右分筆後の九四七番一九の土地につき訴外浅野安美のため同月二四日付交換を原因とする所有権移転登記を経由した、(4)右訴外人は、同年四月一七日、右分筆後の九四七番一九の土地を同番一五の土地に合筆した、(5)右合筆の結果、九四七番一五の土地の一部となった旧九四七番一九の土地に相当するのが原判決末尾添付物件目録(二)記載の土地(本件土地部分)であるというのである。

右事実関係によれば、上告人がした追認により前記訴外会社がした本件土地の売買契約は、上告人につき効力を生じ、農地法五条所定の許可もあった以上、被上告人に対する所有権移転の効力も確定したものであるから、上告人は被上告人に対し、六二万円の支払いを受けるのと引換えに、本件土地につき所有権移転登記手続をなすべき義務を負担しているものというべきである。もっとも、右義務が発生した後、本件土地部分につき浅野安美に登記名義が移転し、さらに、右土地部分は、九四七番五の土地に合筆されて、その一部となったのであるが、その一事により、本件土地部分につき所有権移転登記義務の履行がが不能となったということはできないし、まして、右義務が消滅したとすべき理由は在しない。もとより、上告人は、現に本件土地部分の登記名義人でない以上、登記手続上の登記義務者として所有権移転登記申請に関与することはできないが、被上告人に対する本件土地部分の所有権移転という物権変動に符合するよう被上告人に登記名義を取得させる実体法上の協力義務があるというべきであるから、反対給付と引換えであれ、右義務の履行を求める被上告人の請求は、正当として認容すべきものといわなければならない。それ故、原判決が本件土地部分について現に登記名義人でない上告人に対し即時に所有権移転登記手続を求める被上告人の主位的請求は登記手続上無意味な行為を求めることに帰着するから、理由がないとして、右請求全部を棄却したことは、法律の解釈適用を誤った違法があり、右違法が原判決の結論に影響を及ぼすこと明らかであるから、原判決が第一審判決中主文第一項を取り消して右請求を棄却した部分(原判決主文第一、第二項)は、破棄を免れず、この点に関する論旨は、理由がある。

しかして、被上告人の右請求については、原審が確定した前叙事実関係に基づき裁判をなすに熟しているから、右請求を認容した第一審判決に対する上告人の控訴を棄却すべきである。

予備的請求は、主位的請求が認容されることを解除条件とする審判の申立てであり、被上告人の主位的請求を認容すべきものとする以上、予備的請求は審判の対象とならなくなったのであるから、原判決中右予備的請求を認容した部分(原判決主文第三項)は当然失効し、この部分に対する上告人の上告は、不服申立の対象を失ったから、その当否につき判断を加えるべき限りでないが、原判決のうち前記部分が失効したことを明らかにする意味において、本判決主文にその取消しを明記するのが相当である。

(渡辺 蕪山 浅香)

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